インタビュー

Vol.20

日野先生!先生のハジメテ教えてください!
[日野日出志のザ・ホラー怪奇劇場]公開に先立ち、原作者であるカルトホラー漫画の第一人者、日野日出志先生にお会いしてきました!
Text/ Photo:遠藤 香
日本を代表するカルトホラー漫画の第一人者"日野日出志"。原作は英訳され一躍世界に活躍の場を広げる伝説の漫画家です。幼少の頃、本屋でその表紙の絵のあまりの恐怖からしばらく悪夢にうなされたという人多数。日野作品に影響を受けた映像作家も多数。さらに、映画化しようと挑戦した映像作家も多数。しかし、これまで腐る体、奇病、奇形児、蛆(うじ)、思わず目を伏せてしまう絵の数々の中に隠されたメッセージの哀愁を何度も映像化が試みられたが、残念ながら実現しませんでした。

それが今回ついに、6人の新鋭監督のより「日野日出志のザ・ホラー怪奇劇場」として映画化が実現しました!今回幸運にも日野先生にインタビューのチャンスをいただいたので早速日野先生のハジメテをキャッチしてきました。

蔵六の奇病
蔵六の奇病
Q:ハジメテ漫画を描かれたのはいつごろですか?
小学生の頃ですね。杉浦茂(すぎうらしげる)さんという漫画家の模写ばかりしていました。その頃は漫画になるなんて思ってもいなかったですけどね。
遠藤:ちなみに私が先生の作品をハジメテ見たのって小学生のときに家族といった焼肉屋なんですよ。
日野(敬称略):肉を食べながら読むもんじゃないですよね(笑)
遠藤:ええ、私も読んでからそう思いました。肉どころじゃなくって。
日野:変わった店主だ、そりゃあ焼肉屋が悪いですね。
Q:ハジメテ日野さんの本を読まれる方にお勧めはありますか?
もし読んでいただけるのであれば、「蔵六の奇病」を読んでほしいですね。
僕が23歳のときに、プロの漫画家としてやっていけるどうかというときの作品で、エンターテインメントの部分と、どれだけ自分のメッセージを入れられるかという綱引きの中で40頁足らずの物なのですが、構成・こま割り全てを掛け合わせて一年かけて作りました。そういう意味では自分の人生をかけて作ったものなので、今となってはあれですが当時100%の自分を出し切った作品だといえると思います。
Q:これから作品・作品以外で「初体験」をしたいとしたら何ですか?
アニメをやってみたいですね。今まで僕がやってきたものの短編を集めて動かしてみたいという野望はあります。本格的なホラーアニメって言うのはないはずなんで、やってみたいですね。若い頃から映画監督になりたいというのはあったので、物を作るときにも頭の中に音響・音楽的イメージはありましたよ。監督・役者・カメラマン全部で参加したいですね(笑)

Q:今回の作品の完成品をハジメテご覧になったときの感想は?
それぞれ監督・脚本が違うので、それぞれの受け止め方・表現の仕方で作っていただいてある意味では新鮮だったし、こういう切り口があるんだなとか、勉強になったし楽しかったですね。キャストも豪華で、みなさん一生懸命やってくれて漫画家冥利に尽きますね。

Q:私はハジメテお化け以外のもの(病気・異形のもの)が「怖い」と感じたのですが、どういったコンセプトなんでしょうか?
人には必ず闇の部分があって、それは社会でもそうだし個人でもそう。隠すものでもないんだと思うんです。今の世の中っていうのはそういうものを、隠しすぎてるんですよ。いじめだってそうで相手が死ぬまでいじめてしまうとか。
肉にたとえていうなら、パックで売っているきれいな肉しか知りませんよね?でも元はそれを育てる人も殺す人も、切る人もいる。世の中ってそういう風なんですよ、隠す必要は無いと思うんです。
闇だって同じなんですよ、自分が持っていれば相手だって持っている。人間として汚い部分はあるんですよ、戦争だってそうだし。僕はそういう汚い部分を隠さずに、表現することから、話をしようと思うんです。僕は最初に闇の部分などを出さないと、ヒューマニズムなんて語れないと思いますから。
Q:これからハジメテ本作をご覧になる方にメッセージを。
人が百の要素でできているとすると百に近いほど球形という完成に近いと思うんですよ。でもそれは全員じゃなく、さっきの話にもありましたが闇という突出してしまう部分がある。突出が大きいほど犯罪者になってしまったりする。僕はそういう部分を手本に作っているんです。でもそういう部分は自分の中にも必ずある。そういう部分をもう一度見てください。自分の中にあるということは他人の中にもあるんです。自分の闇の中を見つめて、他人と付き合っていく。そんなことを考えてもらえたらと思います。
今回のインタビューではかなり多くのことを勉強させてもらいました。失礼な言い方ですが日野氏の作品は万人には受け入れられないかもしれません。
「不気味」「絵が怖い」そんな意見も聞きます。私も幼少期や、精神的に弱いときには読めない作品です。
しかしそれは「見たくない部分」だったのだと痛感させられました。
人と関わっていくなら自分の闇を見つめる。それは容易なことだと思いがちですが、なかなかできないことだから難しいんだなと再確認しました。
そんなメッセージが詰まった作品「日野日出志のザ・ホラー怪奇劇場」が10月2日(土)〜10月22日(金)テアトル池袋レイトショーとなります。
是非足を運んでみてはいかがでしょうか。
日野 日出志(ひのひでし)プロフィール
昭和21年、満州生まれ。42年に雑誌「COM」10月号に「冷たい汗」を第5回月例新人入選作として発表。以後、「ガロ」に「埴輪の森の伝説」多数篇の短編、「少年画報」に「蔵六の奇病」「地獄の子守唄」「はつかねずみ」などを掲載、「少年サンデー」に「蝶の家」などを執筆。
60年からホラービデオの制作にも進出、監督作品に「ギニービック2血肉の華」がある。平成11年原画に音響を加えビデオ編集した映像コミック「東海道四谷怪談」を制作。
日野日出志のザ・ホラー怪奇劇場 日野日出志のザ・ホラー怪奇劇場

日本漫画史上最恐カルトホラー漫画家
日野日出志 ついに、実写化!スクリーンに登場!!


原作:日野日出志
監督:安里麻里、中村義洋、白石晃士
出演:「地獄小僧」:山本未来、津田寛治、正司花江
「わたしの赤ちゃん」:有坂来瞳、池内万作
「怪奇!死人少女」:前田綾花、長塩香津美、森下能幸、丹古母鬼馬ニ、江藤漢斉
制作:ジャパンケーブルキャスト、ポニーキャニオン、コモンウェルス・エンタテインメント、パル企画
配給:パル企画

10月2日(土)〜10月22日(金)テアトル池袋レイトショー
日野日出志のザ・ホラー怪奇劇場
©2004 怪奇劇場パートナーズ
左から「地獄小僧」「わたしの赤ちゃん」「怪奇!死人少女」
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