岡山県[備前焼編] Vol.10
陶芸はそんなに甘いもんじゃない。厚さ1cmを目指して土びねり。
晴れの国「岡山」で豪雨・雷雨に見舞われた前編。後編は岡山県の岡山駅を中心に初体験。…のつもりが今回は備前焼体験のみのレポート。まだまだひっぱるハジメテノ岡山県。「土びねり」という特性上写真撮影できず、今回は再現写真にてお送りいたします。
Text/Illust:堀江健太郎 Photo:遠藤香 ロケ地:公園
なんとか曇り空で始まった2日目は、さっそく初体験の備前焼体験からです。備前焼の名前になっている、岡山には備前市という発祥の地があるのですが、同じ岡山県にあるとはいえ、少し距離がある為、岡山市観光協会の運営している「おかやま備前焼工房」にて備前焼体験です。こちらは岡山城や名勝「後楽園」から近い場所にあり、備前焼のお手軽体験をさせて下さいます。
渋滞にハマってしまい、約15分遅れで工房へ。反省をしつつ、申し訳なさそうに受付を済ませた時にハッと気付く。サングラスをかけっぱなしではないか!車を運転していた時にかけていた色眼鏡を、すっかりはずし忘れていたのです。遅れて来た上にサングラスで入場とはなんとも不謹慎な若者。これだから観光客はよぉ。とか思われたらどうしよう…と、さらに気持ちは縮みこみます。
無愛想な今回の師匠に案内というより、無言な師匠の後を着いていき工房へ。あ、なんだ。今回の備前焼体験は結局自分達だけだった事がわかり、少し気持ちが和らぐ。エプロン着けたりと準備が整うと、師匠はおもむろに粘土の塊を手際よく糸で切り、量りへ。今回の体験で与えられる粘土は1人2kg。粘土といってももちろん普通の粘土ではなく、この特殊な粘土を焼くからこそ、備前焼となるわけです。特に備前焼は焼く時に釉薬を使わないので、粘土こそ命となってくるのです。
さて、そんなうんちく話はさておいて、粘土の塊を指差し「なに作んだ?」といきなり切り出す師匠。え、そんな突然言われても…と、遅れてきた上にしどろもどろできないので「ビ、ビアマグで!」。言ったあとになんでビアマグ?と自分に疑問系。というのも、晩酌なんて滅多にしないので使い道がない。それでも小鉢を1個だけ作るよりはコップの方が使えるだろうなと思った結果でした。
希望を伝えると師匠はさらに粘土を適量に切り、手動ろくろに土台を作ってくれました。「じゃ、これを厚みが1cmくらいになるまで伸ばして。」と伝えて師匠は椅子へどっかり。イロハの教えもなくいきなりですか?とりあえず言われるがままに粘土をギュッ、ギュッと縦に押し上げるように伸ばしていく。粘土の固さは小学生の頃から馴染みのある油粘土とほぼ同じ触感なので、まだまだ工作気分で全然陶芸をしている気になれない。もっとこう粘土に指を突っ込むと、みるみるうちに形が変わるアレを想像していたので腑に落ちない。
しばらくして希望の形に整ったのだが、この次はいったいどうすればいいんだろう?それすら聞いてなかったので、師匠から声がかかるを待つ。待つ。待つ間もなんとなく粘土をいじる。するとようやく師匠が声をかけてくれた。「おぃ。もうここは伸ばしちゃだめだよ。厚みは1cmだ。」もっと早く声かけて下さいよ。というか、もう形はこれでいいという事を伝えると、よしバトンタッチだ!といわんばかりに、師匠の動きが急に機敏に。
そして私の粘土にスポンジで水をかける。そしてまず飲み口の方にあたる上端を、またも手際よく糸で切る。えぇ!上端は飲み口だから一番気を使って作ったのに…。そしてさすがやり慣れてる師匠は、手動ろくろを思いっきり回す、回す、水を含んだ粘土から遠心力で水がビュンビュン飛ぶ。おぃおぃこれはエプロンどころじゃカバーできないよ。と席を譲るようなしぐさで、おもむろに避難。
見ていると、なにやらいろんな小道具を使って見る見る形が整っていく。そ、その作業を一番やりたい。っていうか、これはほぼ師匠の作品では?という疑問を思っていると、形が整ったのか師匠はそれをもってどっかへ行ってしまった。戻ってくるなり師匠は次はどうするかたずねてきた。そういえばさっきの作品で粘土はまだ半分も使ってなかったのだ。再び焦ったあげくに「小鉢」と伝える。結局いらないと思ってた小鉢も作ることに。
1個目でだいぶコツを掴み、順調に粘土を伸ばす。ちょっと進歩した気分になり楽しくなってくる。形が決まると再び師匠が形を整える。が、少しいじるだけで今度はスポンジとバケツを渡され、これで形を整えなさいというのです。やった、アレが出来る!ろくろをグルグル回し、濡れたスポンジの面を粘土へ押し当てる。するとスポンジのちょっとした凸凹が模様のようにフワーっと広がっていくのです。これだ、これが陶芸だよ。ちょっといじっただけで表面がそれらしく整ってしまう。陶芸おもしろい!
整形が終わると自分の作品を乾かしに向かう。さっき師匠が出て行ったのはそういうことだったのだ。ろくろを回しながら、粘土へドライヤーをあてて乾かす。グルグルやること10分くらいか、ある程度の乾きを判断すると、再びそれを持って工房へ。
すると今度は粘土の土台側を糸切りし、師匠専用と思われる電動ろくろへ逆さに設置。ブィーとろくろを回し、なにやら独特な陶芸道具を粘土に押し当てると、木材をかんなで挽いたように、みるみる粘土が削れていく。底も彫刻刀のようなもので削っていき、器の下によくある「高台」を作っていく。これはさすがと思わせる腕前で、これは自分では無理だわと、やってもらえることに感謝してしまうくらいでした。
これにて全工程が終了。作品はこのまま預けて、乾燥や釜焼きをやっていただき、約2ヵ月後に宅配されるようになってます。最初はこれだけで備前焼体験とは何事かと思いましたが、それは1個目で慣れさせて、2個目でやらせるという師匠の気配りだったようです。陶芸の難しさと楽しさを両方知ることができる、よい体験ができました。陶芸をより深く学びたくなりました。 おかやま備前焼工房
岡山県岡山市出石町一丁目6-6
Tel/Fax:086-224-3396
休館日:月曜日 (ただし月曜日が祝日のときは翌日)
    年末年始 (12月29日 〜 1月3日)
※備前焼体験は1日3回実施・要予約です。
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